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物流倉庫の自動化に適した倉庫要件とは?|電力・床・防災・天井高で“失敗しない倉庫条件”

2025.12.24

はじめに

「物流倉庫の自動化を検討したいが、何から手を付けるべきかわからない」

「自動化設備の話は出ているが、今の倉庫条件で本当に成立するのか不安がある」

物流現場の自動化を検討する中で、こうした悩みを抱える企業は少なくありません。

近年、Bin to Person型自動倉庫やAGVなどの自動化設備が普及する一方で、導入の可否を左右するのは“設備そのもの”ではなく、建物条件や現場オペレーションといった前提条件であるケースが多く見られます。

しかし実際には、設備選定やベンダー検討を進めた後になってから、
・「床荷重が足りない」
・「天井高や柱スパンが合わない」
・「防災・区画条件でレイアウトが成立しない」
といった制約が判明し、計画の見直しや手戻りが発生することも少なくありません。

本記事では、自動化設備を前提に倉庫を評価する際に見落とされがちなポイントや、“物流倉庫の自動化に適した倉庫”を判断するための考え方を整理します。

特定の設備やメーカーを前提とするのではなく、「今の倉庫(または検討中の倉庫)で、どこまで自動化が成立するのか」を考えるための視点を提供することを目的としています。


なぜ梁下5.5m、床荷重1.5t/㎡が“標準”になったのか?

マルチテナント倉庫の標準として語られがちな梁下有効高さ5.5m、床荷重1.5t/㎡には、現場運用上の“従来型の合理性”が存在します。

◆梁下有効高さ5.5mの背景

一つの根拠は、固定パレットラックの3段積み(3段積みが基本)を前提にした運用です。

3段より多いラックは、安全面やフォークリフト運転技能の観点で難しく、現場ルールとして禁じている倉庫も多い、という実務背景が指摘されています。

床荷重1.5t/㎡の背景

床荷重1.5t/㎡についても、1パレット800kgを2段平積みで扱えること、さらに800kgパレットを荷役するフォークリフト(1.5tクラス)を考慮する、といった運用前提に紐づいています。

重要なのは、これらが「人とフォークリフト中心」の運用モデルから導かれた基準である点です。

すなわち、この標準スペックは“自動化を一切考慮に入れていない基準がスタンダードとなっている”という整理になります。


これからの時代に必要な「物流倉庫の自動化に適した倉庫」要件

物流倉庫の自動化の成否は、機器選定やWMS/WESの出来だけでは決まりません。

実務上は、建物(スケルトン)側の仕様がボトルネックになり、導入後に性能が出ない、保守運用が重い、追加投資が発生する、といった形で顕在化します。

自動化に適した倉庫の論点は、大きく電力、床、消火・避難に整理できます。

1. 電力:100V需要増と“配線・予備容量”の設計

ロボット、PC、周辺機器の増加により100V電源の需要が増える前提で、十分な予備電源容量、各階分電盤までの配線を持てるかが重要になります。

ここが弱いと、充電・運用計画を組んでも現場で“電源が足りない/引けない”という極めて実務的な壁に当たります。

初期段階での見落としは、増設工事や運用制約に直結します。

2. 床:フラットネス、レベルネス、表面粗度、アンカー

物流倉庫の自動化における床は、単に「強い・硬い」だけでは不十分です。

走行系(AGV/AMR等)や高精度機器では、フラットネス、レベルネス、表面粗度、アンカー打設深さといった要素が効いてきます。

また、“滑らかすぎる床はNG”という指摘がある通り、過度に滑る床は別種のリスク(走行安定性、制動、タイヤ摩耗等)を生む可能性があります。

3. 消火・避難:設備余力と事前検討

自動化設備を入れると、レイアウトの固定化や区画の考え方が変わり、消火設備や避難計画の難易度が上がるケースがあります。

余裕を持った消火設備、避難安全検証法を含めた“あらかじめの検討”が重要論点として整理されています。

 

実務の現場では、「機器側で何とか調整する」という判断が積み重なり、結果として自動化の効果が限定的になるケースも少なくありません。

例えば、床の精度不足により走行速度を落とさざるを得ない、電源容量不足で同時稼働台数を制限する、といった事象は典型例です。

これらは致命的な欠陥ではないものの、スループットや稼働率にじわじわと影響し、当初想定していた投資対効果を下回る要因になります。

また、増設フェーズで初めて制約が顕在化するケースもあります。

初期導入時は問題なくても、将来的なロボット増設や設備高度化の段階で、床・電力・防災の制約により選択肢が狭まることがあります。

こうした後戻りコストは、設備投資額以上に運用上の機会損失として効いてきます。

物流倉庫の自動化適性を「初期導入可否」ではなく、「将来拡張まで含めた成立性」で評価する視点が重要です。

補足:意外と重視されないが、見直すべき優先順位

従来、倉庫選定で重視されがちな項目の一部は、自動化の観点では相対的に重要度が下がる(もしくは条件次第)という整理も示されています。

例として、バース比率、倉庫の奥行(深くても問題ない)、照度、空調、換気回数などが挙げられています。

もちろん、商材特性(温調、衛生、作業者比率)で変動しますが、「物流倉庫の自動化最適」を目的にするなら、まずスケルトンスペックを最優先に置く、という発想が合理的です。


免震構造が物流倉庫の自動化で注目される理由

自動化設備は、地震時に“建物が倒れない”だけでは不十分で、「機能として可用性を維持できるか」が問題になります。

棚からのBINずれや落下、梁のたわみ、走行面の波打ちなど、運用停止に直結する現象が想定される一方で、全体の耐震性ではなく機能維持を定量化することは難しい、という課題が指摘されています。

耐震構造では、上階ほど応答倍率が上がり得るため、設置階や建物構造により内部応答が大きく異なり、「震度〇〇に耐えられる」といった単純な表現は成立しにくい、という整理があります。

一方、免震構造は上階の応答倍率がほぼ一定で、震度が高いほど応答倍率が小さくなる(免震効果が高い)という特徴が示されています。

物流倉庫の自動化への投資の前提が「止まらない倉庫」や「復旧の速さ」に置かれるほど、免震は“建物の資産価値”だけでなく“オペレーション価値”として検討テーマになります。


仮想床の基準緩和が示す「天井高の再設計」トレンド

倉庫の高さ設計では、法規・運用・自動化適性が絡みます。ここで重要な制度変化として、自動ラック式倉庫(周囲は防火区画)に関する仮想床の取り扱い基準が、従来5mから8mへ緩和された点が挙げられます(令和6年6月28日)。

従来は、仮想床が容積率算定上の延床面積に含まれるため、容積率が上限の建物では5m以上の自動ラック式倉庫が設置しにくい、という制約があり、これが梁下5.5mの根拠の一つになっていた、という整理があります。

8mに緩和されたことで、5.5mより高くするメリットが増える可能性が示され、ロボット系自動倉庫やパレットシャトル等は6〜8m程度の天井高が最も適しているため、今後増えるのではないか、という見立てが提示されています。

ここでの実務ポイントは、天井高を上げれば物流倉庫の自動化に常に有利、という単純論ではない点です。

例えば、ACR/CTU系のように背の高いロボットを使う形式もありますが、6m以上は安定性や床への要求がシビアになり、4〜6mが適するという整理も示されています。

つまり、これからの倉庫計画は「標準スペックに合わせる」のではなく、「想定する自動化方式に合わせて、最適な高さレンジを設計する」時代に入ります。


まとめ:物流倉庫の自動化適性は“建物スペックの設計思想”で決まる

梁下有効高さ5.5m、床荷重1.5t/㎡というマルチテナント倉庫の標準は、固定パレットラックやフォークリフト運用を前提に合理化されてきた一方で、自動化を前提にした基準ではありません。

これからの倉庫に求められるのは、電力(予備容量・配線)、床(フラットネス/レベルネス/表面粗度/アンカー等)、消火・避難(設備余力と事前検討)といった、スケルトンとしての要件を最初に押さえることです。

さらに、免震構造は、自動化設備の“機能維持”という観点で検討価値が高まりやすく、また仮想床の基準緩和(5m→8m)により、天井高の設計自由度が広がる可能性も示されています。

ただし、最適解は方式(ロボット系自動倉庫、パレットシャトル、ACR/CTU等)によって変わり、単純に「高ければ良い」ではありません。

自動化投資を“設備導入”で終わらせず、継続的に性能を発揮させるには、建物計画・倉庫選定の段階から、自動化適性を仕様として織り込むことが最短ルートになります。

スケルトン要件の棚卸しと、方式に応じた高さ・床・電力・防災のすり合わせを行うことで、後戻りコストを抑えながら、投資対効果の高い自動化を実現できます。

本記事で整理した論点は、特定の業種や自動化方式に限定されるものではありません。

荷主企業にとっては、自社の物流戦略を実現できる倉庫かどうかを見極める判断軸になります。

3PLにとっては、将来にわたり複数顧客の自動化ニーズに応えられる拠点かどうかという視点になります。

また、デベロッパーや設計段階に関わる立場においても、「貸しやすさ」だけでなく「長期的に選ばれ続ける倉庫か」という観点で、スケルトン仕様を再定義する余地があります。

自動化は一過性のトレンドではなく、物流の前提条件になりつつあります。

だからこそ、設備導入の議論よりも一段上流である「建物仕様の思想」から見直すことが、これからの倉庫戦略における競争力の源泉になるといえるでしょう。


最後に:自動化設備検討に進む前に、T5と一緒に前提条件を整理してみませんか?

ここまで読んでいただき、「自社の倉庫(もしくは検討中の倉庫)は、自動化に本当に向いているのだろうか?」「自動化設備の話に進む前に、前提条件を一度整理した方がいい気がする」と感じた方も多いのではないでしょうか。

実際の現場では、自動化設備の検討を進めた“あと”になってから、
・床荷重が足りない
・有効天井高が想定と合わない
・防災・区画条件でレイアウトが成立しない
といった制約が見つかり、計画の見直しや手戻りが発生するケースが少なくありません。

株式会社T5では、自動倉庫やAGV、仕分け設備といった具体的な設備選定に進む前段階で、
・建物条件と自動化方式の相性
・成立する部分と、成立しないリスク
・どこに投資すべきか、どこは見送るべきか
を整理する「上流検討・壁打ち」の支援も行っています。

「まだ設備を決める段階ではない」「ベンダーに声をかける前に、一度整理したい」というタイミングだからこそ、第三者視点で前提条件を整理することが、結果的に最短ルートになるケースも多くあります。

物流倉庫の自動化の検討を本格化させる前に、一度、現状の条件を一緒に整理してみませんか?

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